今回は、ハワイ旅行に日本からモバイルバッテリーを持って行く人にお伝えしたい注意点です。
2016年4月1日から、国際民間航空に関する技術やルールを標準化する国際組織、ICAO(International Civil Aviation Organization、国際民間航空機関)の基準が見直され、リチウム電池やリチウムイオン電池に関する飛行機への持ち込み基準が厳しくなりました。
モバイルバッテリーを持ち込む時の注意点
で、スマホなどを出先で充電したい時に使うモバイルバッテリーは通常、リチウム系の電池に該当します。例えば、モバイルバッテリーのどこかに、「Li-ion」の記載があれば、それはリチウムイオン電池というわけです。
そして、そのようなモバイルバッテリーを、日本から海外に持って行く時に気をつけることがあります。
その気をつけることですが、さっくり言いますと。
モバイルバッテリーの注意点
- 空港のチェックインカウンターで預ける荷物の中に、電子機器に接続していない状態のリチウム系電池は、入れてはならない
- どうしても海外に持っていきたい場合は、機内に持ち込む
- 機内に持ち込めるリチウム系電池には、その容量(ワット時定格量)次第で持ち込める個数に制限がある
- また電池の端子がショートしないように絶縁して持ち込む必要がある
- 機内に持ち込む場合、大容量すぎる電池は持ち込めない
という感じです。この注意点からは、電子機器に接続しないモバイルバッテリーに限らず、例えばデジカメの予備のバッテリーなども、その扱いに注意が必要なことがわかります。
そして、モバイルバッテリーも含めた電子機器に接続しないリチウム系電池は、スーツケースなどカウンターで預ける受託手荷物の中には入れてはならず、機内に持ち込むルールとなったことがわかります。
航空会社毎のリチウム系電池の機内持ち込み条件
では、モバイルバッテリーを機内に持ち込むことにした場合、次に気になるのが、それを機内に持ち込むための条件です。
というのも、上で述べた通り、機内に持ち込めるモバイルバッテリーには、その容量(ワット時定格量)次第で持ち込める個数に制限があるからです。
そこで、日本とハワイを結ぶ航空会社の日本語ホームページにおいて、この記事を書いている2016年11月時点での、リチウム系電池の機内持ち込み条件を次の表にまとめました。
航空会社 | 機内持ち込み条件 |
---|---|
JAL | リチウム含有量8g以下、またはワット時定格量が160Wh以下 |
ANA | ・ワット時定格量が100Wh以下は無制限 ・100Whを超え160Wh以下は2個まで |
ユナイテッド | ほとんどの場合、ワット時定格量が100Wh〜160Whのものは2個まで。SafeTravel.dot.gov および FAAのウェブサイトの確認も必要。 |
デルタ | ワット時定格量が最大160Whまで持ち込みOK。100Wh〜160Whのものが2個まで。 |
ハワイアン | 予備のバッテリーは2個まで。容量に規制限度はあることはわかる、が具体的な数字は明記されていない |
大韓航空 | ワット時定格量が100Wh以上は、機内持ち込みOK。2個まで持ち込める。ワット時定格量の上限は明記されていない。 |
チャイナエアライン | 危険物情報によると搭乗する国毎に条件が変わる。米国の場合は、phmsa.dot.govの条件に従い、そのワット時定格量の条件は、100Wh〜160Wh。個数はおそらく2個まで。 |
※2016年11月の情報を元に作成。実際には、常に最新の情報をチェックしてください。
※「機内持ち込み条件」欄のリンク先は、各航空会社のリチウム系電池の持ち込みに関して情報を公開しているページです。
で、このような航空会社のルールは、意外とよく変わります。なので、上の表はあくまで参考と考えてください。そして、正確な情報は、常に航空会社が公式に公開する最新のものを確認してください。
現時点で各社のルールをざっくりまとめると。まず、機内に持ち込めるモバイルバッテリーの容量、つまりワット時定格量の上限は、「160Whまでのもの」となっています。で、その容量が、100Wh〜160Whの範囲に該当するものの持ち込みには、個数の制限があり、それは「2個まで」という感じですね。
各社のそのホームページの内容よっては、そこまで厳密に条件が書いていないものもあります。が、それを標準化しているICAOのルールに従っているとすると、実際には、各社横並びで同じ条件と考えて差し支えないはずです。
普通の人が使うモバイルバッテリーなら特に心配ない
さて。航空会社が公開しているリチウム系電池の機内持ち込み条件をまとめてみた結果、私は、「普通の人が使うモバイルバッテリーなら、機内に持ち込む限り特に心配がない」と考えています。
というのも、普通の人が利用するモバイルバッテリーの容量は、100Wh〜160Whに満たないものがほとんどだからです。つまり、個数の上限に引っかかるような容量のモバイルバッテリーを利用している人の方が少ないはず、と考えています。
詳しく述べますと。上の条件を見ると、リチウム系電池を機内に持ち込む際には、その容量を示す「ワット時定格量」がポイントとなることがわかりますよね。
で、そのワット時定格量は、その電池が1時間に出力できる電流時(mAh)と、電圧をかけたものになります。リチウムイオン電池の場合、その電圧は、基本3.7Vとなるので、その掛け算で、ワット時定格量が求まります。
例えば、私の手元にある小さめのモバイルバッテリーには、「3.7V/5400mAh(20Wh)」という記載があります。つまり、20Whがワット時定格量を示しており、これがどのように求まっているのかというと、次の通りです。
3.7(V) × 5400(mAh) = 19980(mWh) = 19.98(Wh) → 約20Wh
ということです。なので、個数制限のかかる100Wh〜160Whに満たないことがわかります。
で、これは容量小さめのモバイルバッテリーでの計算例でしたが、試しに大容量のモバイルバッテリーで、同じくワット時定格量を計算して見ると。例えば、今現在、Amazonで買えるモバイルバッテリーのうち、「超大容量」と紹介されているものに、35000mAhのものがあります。
これがリチウムイオン電池だったとして、そのワット時定格量を求めると、次の通りです。
3.7(V) × 35000(mAh) = 129500(mWh) = 129.5(Wh) → 約130Wh
このくらいの容量のモバイルバッテリーになって初めて、100Wh〜160Whの範囲に入ってくるというわけです。なので、普通のモバイルバッテリーを使っている人ならば、絶縁した状態で機内に持ち込む分には、容量も個数も特に心配ありません。
ちなみに、そのモバイルバッテリーが、リチウムイオン電池だった場合は、その電圧が3.7(V)で計算できることから、100Wh〜160Whとなる、mAhを逆算することができますね。次の通りです。
約27,028mAh 〜 約43,244mAh
昨今、モバイルバッテリーの容量は、売られる時にはmAhで紹介されることが多いですから、こちらの方がわかりやすいはずです。ざっくり、mAhが、2万7千〜4万3千のものは、持ち込み制限の個数に気をつける必要があります。
ただし、この計算結果は、あくまで、3.7(V)で計算するリチウムイオン電池での前提ですので、その点にはご注意ください。